2014年01月19日

落語入門21〜長屋の花見〜

寒い日が続きますね。せめて落語は春の噺を。

貧乏長屋の一同が、朝そろって大家に呼ばれた。みんなてっきり店賃の催促だろうと思って戦々恐々。
何しろ、入居してから十八年も店賃を入れてない奴もいれば、親父の代から払ってない奴もいる。
もっとすごい奴は「店賃てな、何だ?」

おそるおそる行ってみると大家は、
「うちの長屋も貧乏長屋なんぞと言われているが、景気をつけて貧乏神を追っぱらうため、ちょうど春の盛りだし、みんなで上野の山に花見としゃれ込もう」
さらに、酒も一升瓶三本用意したと聞いて、一同大喜び。

ところが、これが実は番茶を煮だして薄めたもの。色だけはそっくり。
お茶(ちゃ)けでお茶(ちゃ)か盛り。

玉子焼きと蒲鉾の重箱も、
「本物を買うぐらいなら、無理しても酒に回す」
と大家が言うとおり、中身はたくあんと大根。

まあ、向こうへ行けば財布ぐれえ落ちてるかもしれねえと、情なくもさもしい了見で出発した。

初めから意気があがらないことはなはだしく、ようやく着いた上野の山。
桜は今満開で、大変な人だかり。

一つみんな陽気に都々逸(どどいつ)でもうなれと、大家が言っても、お茶けでは盛り上がらない。
「熱燗をつけねえ」
「なに、焙じた方が」
「何を言ってやがる」

「蒲鉾」を食う段になると、
「大家さん、あっしゃあこれが好きでね。毎朝味噌汁の実に使います。胃の悪いときには蒲鉾おろしにしまして」
「何だ?」
「練馬の方でも、蒲鉾畑が少なくなりまして。うん、こりゃ漬けすぎで酸っぺえ」

玉子焼きは
「尻尾じゃねえとこをくんねえ」

大家が熊さんに、お前は俳句に凝ってるそうだから、一句どうだと言うと
「花散りて死にとうもなき命かな」
「長屋中歯をくいしばる花見かな」
陰気でしかたがない。

大家が月番に、お前はずいぶん面倒見てるんだから、景気よく酔っぱらえと命令すると、やけくそで
「酔ったぞっ。俺は酒飲んで酔ってるんだぞ。貧乏人だって馬鹿にすんな。借りたもんなんざ利息をつけて返してやら。悔しいから店賃だけは払わねえ」
「悪い酒だな。どうだ。灘の生一本だ」
「宇治かと思った」
「口あたりはどうだ?」
「渋口だ」
酔った気分はどうだと聞くと、
「去年、井戸へ落っこちたときとそっくりだ」

すると、一人が湯飲みをじっと見て、
「大家さん、近々長屋にいいことがあります」
「そんなことが分かるかい?」
「だって、酒柱が立ちました」m(__)m

大家さんと長屋連中の絆が微笑ましいですね。ぜひ心の中まで暖まって下さい。


posted by 葵家 金太郎 at 10:07| 東京 ☀| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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